新歓コンパ




「かんぱぁ〜〜い!!」





「今年の新歓コンパには何と6人の新入生が来てくれました!では、1人ずつ自己紹介をお願いしま〜〜す」



「はぁ〜い!じゃぁトップバッター行きます!!文学部1年、牧原唯です。もともと旅行好きだったのでこのサークルを見つけて即参加しちゃいましたぁ。よろしくお願いしま〜す」


「えっと〜、工学部1年、津川拓斗です。楽しいことが大好きなんで、このサークルは俺にぴったりだと思いました〜。よろしくお願いします〜」


「同じく工学部1年の都築恭一っす。拓斗とは高校からの友達で誘われてきました〜。よろしくっす〜」


「教育学部1年の羽村百合です。知り合いに誘ってもらい参加しました。よろしくお願いします」


「経済学部1年、藤本亮です。大学にいる間にいろんなところを見たいと思い、このサークルに参加しました。よろしくお願いします」




新入生が続々と挨拶をしていき、残すはあたしだけとなった。


「あ、最後になりました、文学部1年の矢本美里です。今日は唯に誘われて来ました。よろしくお願いします。」






会も中盤に入り、気付けば1年生が固まって話し出していた。


「ねね、2人は一緒の高校だったんだよね?ってことは地元?」

「そそ。地元も地元だし、東斗大付属高校出身なんだ〜。そういう唯と美里も知り合いなんだよな?」

「そうよ〜。事前ガイダンスの日に知り合ったんだけど、けっこう性格があったりすんのよね〜」


あたしも唯とは気が合うかもと思っていた手前、同じことを感じてくれていたということに
あたしは何だかうれしくなった。



「あんた何1人でにやけてんの?」


ふと前を見ると都築恭一と目が合った。人数も人数というせいか、気付けば2−2で話が弾んでいるようだった。
つまりあたしと都築恭一が組み合わせになっているということで…。


「や、別に……お、お酒がおいしいなぁ〜って」
「変なヤツ」


うるさい!と心の中でつぶやいた。もちろん声に出せるわけがない…。


「都築くんはこのサークル入るの?」
「入るからここにいるんだろ?お前入んないのかよ?あ、それと恭一でいい。俺も美里って呼ぶから」


ふいに名前を呼ばれてドキッとした。だって高校の頃は美里って呼ぶ人少なかったんだもん〜!


「あたしは…考え中?」
「何を?」
「何をって…何をだろう?」
「はは!お前面白いヤツだなぁ〜。考えることがないなら入れよこのサークル。俺も入るし」
「恭一くんが入るのとあたしが入るのってなんか関係あるの?」
「だって俺、お前のこと気に入ったし」


思わず赤面しそうになった。こういうことをサラッと言えちゃう人っているんだなぁ〜。
ヤバイ…ちょっとクラッときたかも…。




「さて〜、1次会はここで終了です!皆さん2次会の会場へ移動してくださ〜い」


「美里2次会どうする?あたしは行こうと思うんだけど…」
「う〜ん、あたしは今日はやめとくわ。唯は楽しんできてよ」


あたしはそういって団体から遠ざかっていこうとした。


「ちょっと待って!」


振り返ると団体の中からこっちに向かって走ってくる男の人が目に入った。


「帰るの?だったら送ってくよ」
「え?でも今から2次会なんですよね?悪いですからいいですよ〜」
「何言ってんの!もう時間も遅いし危ないから」
「…じゃあお願いします」
「うん。えっと美里ちゃんだよね?」
「あ、はい。えっと…」
「あ、俺2年の伊澤和希。よろしくね」
「こちらこそ!2次会遅刻させちゃってすみません…」
「いいのいいの。おかげでこんな可愛い子送ってけるんだから。役得役得」


またも美里は顔が火照ってくるのが感じられた。大学の男の人ってみんなこんなに口うまいもん?
早く慣れなきゃ!!


「ん?顔赤いけど大丈夫?飲みすぎちゃったかな?」


といい、気付けば手をつながれていた。どうやら支えてくれているようだ。
免疫のないあたしは鼓動が早まり、余計に苦しくなってしまった。


「ホントにつらそうだね?少し休んでいこうか」


と和希さんは近くの公園のベンチに向かって歩き出していた。



「ハイ。お茶。これ飲んで少し休憩しよう」


すぐそばの自販機で購入したお茶をあたしに差し出した。
あたしはお礼を言ってそれに口をつけた。


「お酒飲むの、初めてだった?」
「ハイ。実は…」
「うんうん。真面目でよろしい!あ、でも今日で飲んじゃったからもうダメか」


と茶化しながら話してくれた。


「和希さんはお酒強そうですよね!」
「まさか〜。俺弱いよ〜。今日もほとんど飲んでないし」
「そうなんですか!?意外〜」
「だって、ビール4杯に焼酎3杯、あと日本酒と…」


と数えだした和希さんを見て、それって十分強いんじゃ…と心の中で呟いた。



「今日は星がキレイですね!」

あたしは空を見上げて言った。

「あれがカシオペヤ座。で、あれが、北斗七星?それで…」


と考え込むあたしは不意に視線を感じて隣の和希さんを見た。
和希さんはじっとあたしを見ている。


「えっと…どうかしました?」
「ああ、いや…何でもないよ。さ、帰ろうか。」


そういって和希さんは立ち上がり歩き出す。あたしもつられて歩き出した。